三、妊活との出会いと37歳主婦の涙

20数年前の話になりますが、上野に独立する前に、私は埼玉県の吉川温泉に勤めていました。鍼で腰痛施術に専念して、ギックリ腰、椎間板ヘルニアの患者様が主な客層でした。 ある日、ある60歳代後半の坐骨神経痛の患者様に出会いました。痛みと歩行困難で、彼はとても辛かったのでした。結局3回ぐらいの鍼施術でその患者様の坐骨神経痛が取れて 互いに友達のご縁が出来ました。数か月後のある日、彼は急いで当院を訪ねました。「先生、今日は娘の事で相談に来ました。実は娘はお腹が痛くてともつらいです。先生に診てもらいたいです。「お嬢様はどうなさいましたか」と聞くと「詳しいことはわかりませんが」と彼は答えました。「ならば一度お嬢様にお越し頂いてお伺いしましょう」と私は答えました。
数日後、お嬢様は一人で訪ねてきました。37歳の主婦の方です。「私は卵巣嚢腫です。数年前に左の卵巣が腫れて激痛を走っていたので仕方がなく摘出されていましたが。しかし去年より反対側の卵巣に同じ症状が起き悪化して来たので、病院に診断にしてもらったら、右側の方も手術しないと治らないと医師に言われました
「すごくショックでした。30歳に結婚して7年、私はまだ子供がいないです。」
私はずっと黙って彼女の主訴を聞いていました。「手術を断ったのです。子供が欲しいです!昨年から痛みを耐えながら治してくれるところをずっと探して行ったのです。九州、北海道までお母さんと出かけ、あちこちの温泉の湯治法も体験しました。しかし、卵巣が膨れ上がって痛みはもっと強くなってしまいました。」と彼女は涙ぐんでいました。
私はこれまで妊活の分野に触れたことはありませんでした。しかし、その時すっかり彼女の話を聞き入れ心が打たれました。可哀そうには思わず、むしろ女性の心の強さに感動され、ついに心を決めました。
「私と勝負してみましょうか、あなたは週に2回施術に来られる約束をしてくれれば、施術方法は私が考えます。」と彼女に申し上げました。彼女は目が光り、「分かりました、先生の指示通りにします。」ときっぱり答えてくれました。
戦いを始めました。私は家に帰り、東洋医学の書籍を調べ、「卵巣嚢腫には淤血と冷えが関連し、解消に温灸を施す」という施術方針を決め、さっそく休日にホームセンターに行って木の板と網を購入し、独自の温灸箱を作りました。
週2回の温灸を3週間で6回施した所「先生、痛みが消えました!」と彼女が歓声を上げた瞬間にむしろ私の感動が大きかったと覚えています。「あなたのご努力に神様が応えて下さいましたね!」と褒める私の言葉に、「いいえ違います。先生の温灸が無ければ、絶対にありえないです。」と彼女は目に涙が光っていました。
その後温灸施術が続き、2か月を迎えるある土曜日の朝、彼女は興奮気味で当院に駆けつけ「先生、今朝病院に診察に行きましたら、自然妊娠していたと医者に言われました。」 あの瞬間私は言葉が詰りました。彼女の家族一同が当院に来て、入口で「先生は本当に神様です」と挨拶されました。今でも当時照れ臭かった自分の顔を覚えています。

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